RASに類似した脳内システムは? RASを含む脳内システムとその関係性
RASに類似した脳内システム
RASと同様に、広域的な調節・制御を担うシステムが脳内にはいくつか存在します。
1. デフォルトモードネットワーク(DMN)
Default Mode Network
場所
内側前頭前皮質・後帯状皮質・楔前部・側頭頭頂接合部
機能
外部に注意が向いていないとき(ぼーっとしているとき)に活性化します。
- 自己参照的思考・内省
- 過去の記憶の想起
- 将来のシミュレーション
RASとの関係
RASが覚醒を維持する一方、DMNは「内向きの意識」を担います。互いに拮抗する傾向があります。
2. セイリエンスネットワーク(SN)
Salience Network
場所
前島皮質・前帯状皮質
機能
環境の中から重要なものを検出し、注意を切り替えます。
- DMNとタスクポジティブネットワークのスイッチング
- 感情・痛み・社会的信号の処理
RASとの関係
RASが全般的な覚醒を制御するのに対し、SNは何に注意を向けるかを決める、より高次のフィルターです。
3. 青斑核システム(LC-NE系)
Locus Coeruleus – Norepinephrine System
場所
脳幹の青斑核(RASの一部とも重なる)
機能
ノルアドレナリンを脳全体に放出し、警戒・ストレス応答・注意の制御を担います。
- 「戦うか逃げるか」反応の脳内起点
- 集中力・記憶固定にも関与
特徴
RASのサブシステムとも言えますが、独立した調節機能を持ちます。
4. 基底核システム
Basal Ganglia
場所
大脳深部(線条体・淡蒼球・黒質など)
機能
行動・思考の選択と抑制
- やるべき行動を通過させ、不要な行動を抑制するゲーティング機能
- 習慣形成・報酬学習
RASとの関係
RASが「意識を起動する」とすれば、基底核は「何をするかを選ぶ」
5. 視床核システム
Thalamic Nuclei
場所
視床(脳の中央)
機能
感覚情報の中継・フィルタリング
- ほぼすべての感覚情報が大脳皮質に届く前に視床を経由する
- 睡眠中は情報を遮断し、皮質への入力を制限する
RASとの関係
RASの指令を受けて、皮質への情報の流量を調節する実行機関です。
全体像の比較
| システム | 主な役割 | 作動スケール |
|---|---|---|
| RAS | 覚醒・意識のオン/オフ | 全脳 |
| DMN | 内省・自己参照 | 全脳ネットワーク |
| セイリエンスネットワーク | 注意の切り替え | 全脳ネットワーク |
| LC-NE系 | 警戒・ストレス応答 | 全脳(化学的) |
| 基底核 | 行動の選択・抑制 | 局所〜全脳 |
| 視床 | 感覚情報の中継・制限 | 全脳への入口 |
これらのシステムは独立して働くのではなく、互いに連携・拮抗しながら、意識・注意・行動を統合的に制御しています。
RASを含む脳内システムのネットワーク図

主要な関係性
RAS → 視床 → 皮質という覚醒の主経路が図の骨格になっています。
セイリエンスネットワーク ↔ DMN の拮抗関係(破線)が特徴的で、外向き注意と内向き意識が互いを抑制します。
LC-NE系はノルアドレナリンを脳全体に広域放出します。
システム間の関係一覧
RAS(網様体賦活系)を起点とする関係
RAS → 視床
覚醒信号を視床に送り、視床を通じて大脳皮質全体を目覚めさせます。RASと視床は、セットで意識のスイッチとして機能します。
RAS ↔ LC-NE系(双方向)
RASはLC-NE系(青斑核)を賦活し、ノルアドレナリンの放出を促します。逆にLC-NE系もRASにフィードバックし、互いに覚醒レベルを調整し合います。
RAS → 基底核
覚醒状態に応じて基底核の活動水準を調節します。眠いときに行動選択が鈍くなるのはこの経路の影響です。
LC-NE系を起点とする関係
LC-NE系 → 大脳皮質(広域)
ノルアドレナリンを脳全体に広く放出します。特定の経路ではなく、シャワーのように全体に降り注ぐ化学的な調節で、警戒・集中・記憶固定を促します。
LC-NE系 → セイリエンスネットワーク
ストレスや驚きがあると、LC-NE系がセイリエンスネットワークを強く賦活し、重要な刺激への気づきを高めます。
視床を起点とする関係
視床 ↔ セイリエンスネットワーク(双方向)
感覚情報の中継役である視床と、何が重要かを判断するセイリエンスネットワークが双方向に連携し、注意を向けるべき情報を選別します。
視床 → DMN
タスクがなく感覚入力が少ないとき、視床は皮質への情報流入を絞り、DMNが活性化しやすい状態を作ります。
セイリエンスネットワークを起点とする関係
セイリエンスネットワーク ⇄ DMN(拮抗・スイッチング)
最も重要な関係の一つです。外部に重要な刺激があるとセイリエンスネットワークがDMNを抑制して外向き注意に切り替え、逆に刺激がなければDMNが優位になります。シーソーのような関係です。
セイリエンスネットワーク → 基底核
「これは重要だ」と判断した後、実際に行動を起こすよう基底核に指令を送ります。気づきを行動につなぐ橋渡し役です。
基底核を起点とする関係
基底核 → 視床(ゲーティング出力)
基底核は、やるべき行動を選んで視床に出力し、視床がその情報を皮質に伝えます。基底核→視床→皮質という経路が、意図した行動の実行を支えます。
まとめ表
| 送り手 | 受け手 | 関係の性質 |
|---|---|---|
| RAS | 視床 | 覚醒信号の送出 |
| RAS | LC-NE系 | 双方向・覚醒の相互調整 |
| RAS | 基底核 | 覚醒レベルに応じた活動調整 |
| LC-NE系 | 大脳皮質(全体) | ノルアドレナリンの広域放出 |
| LC-NE系 | セイリエンスネットワーク | 警戒・驚き時の賦活 |
| 視床 | セイリエンスネットワーク | 双方向・重要情報の選別 |
| 視床 | DMN | 入力減少時にDMNを促進 |
| セイリエンスネットワーク | DMN | 拮抗・スイッチング |
| セイリエンスネットワーク | 基底核 | 気づきから行動への橋渡し |
| 基底核 | 視床 | 行動選択のゲーティング出力 |









